金児昭氏著の『上級経理入門』という書籍を紹介する。 金児昭氏著『ビジネス・ゼミナール・会社経理入門』という書籍を読破した後、更なる高みを求めて金児昭氏著の『上級経理入門』という書籍も読破しました。『ビジネス・ゼミナール・会社経理入門』が基礎編としたならば、『上級経理入門』は応用編、上級者向けの書籍といったところなのでしょう。 国でも企業でも、経済活動を営む場合の共通的な原則は、「最大の効果を目指し、最小の費用で済ませる」ことです(303頁参照)。節約と言うと、何か資金の支出を抑えることのように思われ

金児昭氏著の『上級経理入門』という書籍を紹介する。


金児昭氏著『ビジネス・ゼミナール・会社経理入門』という書籍を読破した後、更なる高みを求めて金児昭氏著の『上級経理入門』という書籍も読破しました。『ビジネス・ゼミナール・会社経理入門』が基礎編としたならば、『上級経理入門』は応用編、上級者向けの書籍といったところなのでしょう。


国でも企業でも、経済活動を営む場合の共通的な原則は、「最大の効果を目指し、最小の費用で済ませる」ことです(303頁参照)。節約と言うと、何か資金の支出を抑えることのように思われますが、企業成長が見込まれるのであれば積極的に資金を支出するべきだと思います。費用は「最大の効果」が目的ですので、効果があると予測できるものには支出するべきものなのです。あたかも節電のためにエアコンを使わなかったために熱中症でお亡くなりになった方のように、確かに節電は大切ですが、しかし、体調を崩したり、亡くなってしまっては元も子もありません。本末転倒な話です。ただし、意味なく支出するのは単なる無駄使いに過ぎません。費用対効果の前提の下、費用が効果と結びつくかどうかが支出の基準になるように思われます。結局、企業は成長しなくてはゴーイング・コンサーン(継続企業)を達成できません。成長には資金の支出は不可欠です。資金を支出するのが悪いのではなく、資金の支出の仕方やあり方が問題なのだと思います。経済的欲望は大きな経済的希望を求める一方で、財貨は有限ですから国も企業も先の経済原則に基づいて、経済活動を効率的に営み、有限の財貨を最も効率的に利用していく必要があります。企業経理は、このような経済活動の効率化手段としての役割を果たしています(303頁参照)。


金児昭氏は「経理人は、やはり金庫番でなければならない」と述べています。経理人は、その機能上、おカネの保全、財産の保全について最も心を入れている人々です。本質的には変わらない金庫番が、昔流のおカネの勘定と財産の保全だけに大部分の時間をさかず、経営を発展させ改善していくことに注力する時間を任務とします。企業の収益状況、財政状態をよりよくする行為が経営経理の本質です。このような業務に経理人が参画していく際に、企業の経営の成績、財政の状態を会計法規に即して正しく表示していくことが、ちょうど金庫番がおカネを正しく勘定し保管することに対応する、制度会計の基本です。企業人は、経営状況を把握するために、まず制度会計に基づいた決算書類<貸借対照表損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表(『ゼミナール・会社法入門(第六版)』岸田雅雄著 387頁参照)>を理解することです。数学の公理に相当するものが、会計にも「会計公準」として存在します。その内容は、①人間が作るものであること、②貨幣単位で表されるものであること、③必ずある期間、例えば、1カ月、半年、1年という単位で、その事業の成績、財産状態を把握すること、という三つです。このような前提の上に立って制度会計はできあがっています。まず、制度としての経営経理です。有史以来、世界の大中小企業の様々な企業が作り上げてきた会計慣行を基準とし、企業会計審議会で検討されて公表されている企業会計原則を基礎とする、商法(=現商法+会社法)、税法、証券取引法(=現・金融商品取引法)などの会計規則です(305頁参照)。会計は、一般に金銭の出納を意味し、経理は、金銭だけでなく、広く資産・負債・資本の管理までを行い、企業経営にも参画していく業務を指します。金児昭氏は、会計の基本は、①真実性、②財産保全、③収益・利益向上の三つであると考えています。経理・会計の真実性・財産保全に関する社会的要請により内部牽制制度、内部牽制組織、内部会計監査も重視され、制度としての財務会計についての会計法規上の要請はかなり満足される状態にきています。企業としても、経営管理の基本をしっかり把握した経営理念の下で、収益・利益の向上を目指し、経営事象を検討していかざるをなくなっています(312頁参照)。


『上級経理入門』という書籍の中で金児昭氏は「経理人の行動指針」を記載しています。経営の前提となる諸条件がめまぐるしく変化する時代に入って、企業の経理部門が企業運営に参画する内容、方法は一変しました。1980年代までの経理業務は、簿記の仕訳から入り、貸借対照表損益計算書の作成、分析、評価を中心課題とする制度会計に重きを置いてきました。しかし、今や、研究開発、新製品の企業化、需要動向調査、設備投資、人員採用、販売促進、広告宣伝、経営上重要な契約の折衝、リスクの排除、受注など、簿記の仕訳に至る以前の企業活動のあらゆる段階で、多くの関係者にサポート・協力・アドバイスすることこそ経理人の真の任務と考えられるようになっています。経理人が実務上マスターすべき経理業務を鳥瞰図的に見ますと、①予算編成、②月次決算、③原価差異分析、④特殊原価調査、⑤業務の効率化、総費用の節減、⑥新規事業検討、⑦事業再建会計、⑧関連会社会計、⑨合併、分割、事業売買、⑩経営上重要な契約への支援、⑪資金会計、⑫収益・原価計算、⑬国際会計・税務、⑭増資に関する実務、⑮商法(=現商法+会社法)に基づく決算、⑯金融商品取引法に基づく決算、⑰税務会計、⑱連結決算、⑲業績評価、⑳会計監査、と二十項目にも及びます。また、金児昭氏は若い新入経理人に対して、①他の人と常に友好的である、②経理業務への継続的な探求を怠らない、③口を堅くして秘密を守り、ひけらかさない態度で多くの人の信用をかち得ることが肝要である、という三つのことを要請しています。以上のこと踏まえて、経理実務に携わる者が目指すべき望ましい経理人とは、①損益計算書貸借対照表の作成者、その分析屋として満足しない・・・経営管理会計遂行で得た真実の経理資料を駆使して経営トップ層をはじめ各層の人々に経営の改善策を勇気をもって進言することが任務です。②単なる計算屋ではない・・・計数、数値に基づいた経営効率化を推進します。③経理会計知識の習得と実践の練磨を怠らない・・・専門知識・技能のない判断に基づく経営への提言は危険です。④収益向上、総費用節減は会社全体で取り組むべきと心得る・・・これらの義務は経営組織の中の一人ひとり、特にそれぞれの階層における管理者の目標に対する意欲と行動によって達成されます。経理部門はそれを支援するに過ぎません。⑤経理部門自らが利益を出せると考えてはならない・・・利益確保において一義的な役割を果たすのは各事業部門であり、それに対し利益増大策・損失減少策への協力とアドバイスをすることが経理の任務です。⑥大胆な挑戦心を持ち、正しいことを貫く信念をもつ・・・自らを可愛がる経理人は信用されず、経営に役立つ仕事はできません。⑦利益向上を目指す事業部門、工場などの意欲を阻害するような考え方をしてはならない・・・経理人には、企業内の人々の気持ちが利益向上を目指すように促す役割があります。これが理想であり、目標とする経理人の姿です。経理人の仕事は計算主体であることが多いのですが、真の役割は、企業財産を守りつつ、企業の中の多くの人々の利益向上・損益減少を目指す意欲を高揚させるために努力することです。金児昭氏は、経理人に対して、使命感を持って経営諸事象に携わる人々に対する「サポート(支援)」を第一として、第二に「協力」を、第三に「経理人としてのアドバイス」を旨とし、後方支援(サポート)の精神を持ち、真の実力と温かい心と冷静な目をもった人になってもらいたいと述べています(320頁参照)。


金児昭氏著の『上級経理入門』という書籍の中で興味深かったのは、206頁の「やる気を引き出す予算編成」です。企業は人なりです。従業員のやる気を考慮した予算は重要です。また0次査定と0ベース予算、内部牽制の三原則は熟読する価値のあるものでした。