岸田雅雄著『ゼミナール・会社法入門・第6版』という書籍を紹介する。  会社法を学ぶ教科書の中でも岸田雅雄氏の『ゼミナール・会社法入門・第6版』は群を抜いて分かりやすい教科書です。企業を取り巻く現実の世界を記述しながら法と現実との乖離の問題にも触れ、会社法の内容を平易に教授してくれます。会社法をこれから学びたい方にはお勧めの書籍です。 新会社法では、全ての株式について譲渡制限を設けている株式会社とそれ以外の株式会社を区別し、規制しています。前者を公開会社、後者を非公開会社としています。以前は商法特例

岸田雅雄著『ゼミナール・会社法入門・第6版』という書籍を紹介する。


 会社法を学ぶ教科書の中でも岸田雅雄氏の『ゼミナール・会社法入門・第6版』は群を抜いて分かりやすい教科書です。企業を取り巻く現実の世界を記述しながら法と現実との乖離の問題にも触れ、会社法の内容を平易に教授してくれます。会社法をこれから学びたい方にはお勧めの書籍です。


新会社法では、全ての株式について譲渡制限を設けている株式会社とそれ以外の株式会社を区別し、規制しています。前者を公開会社、後者を非公開会社としています。以前は商法特例法にて、大会社、中会社、小会社という三区分だったものが、新会社法では、資本金5億円以上、または負債総額が200億円以上の株式会社を大会社とし、それ以外を中小会社とする二区分になりました。資本金に関しても、最低資本金制度が撤廃され、1円でもよくなり、会社設立後は0円、すなわち資本金がゼロの会社も認められるようになりました。


 有限会社がなくなり、会社の種類は、株式会社と持分会社だけになりました。持分会社には、有限責任社員無限責任社員の有無で、合同会社合資会社、合名会社に分かれます。株式会社は、委員会設置会社とそれ以外の会社に分かれます。会社の機関も選択性になり、株主総会に加えて、取締役のみ、取締役+監査役取締役+監査役+会計監査人、取締役会+会計参与、取締役会+監査役取締役会+監査役会取締役会+監査役+会計監査人、取締役会+監査役会+会計監査人、取締役会+三委員会+会計監査人の会社機関形態を取ることになります。ただし、大会社は会計監査人を置かなければならないなどの、大会社、中小会社、公開会社、非公開会社の別による条文、規制があるため、選択可能な会社機関形態の選択肢が絞られます(大会社は、からの選択になります)。


 株式に関しても従来の商法内で会社法を規定しているものと変化していることがありました。種類株式が発行できるようになったことです。注目すべき株式は、議決権制限株式です。全ての事項について議決権を有しない完全無議決権株式と、一定の事項についてのみ議決権を有する一部議決権制限株式があります。中でも黄金株には興味が湧きました。新会社法では、種類株式の一種として黄金株を認めています。黄金株は、会社法108条1項8号において「株主総会において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの」を会社が規定することを認め、一部の株主に議決権の優遇を与えるものです。株主平等の原則を学んだ私は少し驚いた規定でした。


 新会社法では会計参与の制度が設けられました。会計参与とは取締役と共同して計算書類を作成する会社の機関です。会計参与の主たる職責は、取締役等の職務執行者と共同して、計算書類の作成に関与することです。一般に関与とは、当然に監査を意味するものではなく、またこれによって、その会計書類の正当性を担保するものでもありません。会計参与になり得る者は、公認会計士監査法人を含む)、または税理士(税理士法人を含む)です。


 監査役について変化した点は社外監査役の規定です。以前は、社外監査役の資格が、商法特例法にて、「その就任の前5年間会社又はその子会社の取締役又は支配人その他の使用人ではなかった者でなければならない」とされていたのに、現在は、会社法2条16号にて、「株式会社の監査役であって、過去に当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与、若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがない者」に変りました。平成5年の商法改正時に初めて社外監査役制度が導入され、当時は社外監査役の人材不足という側面を考慮し、暫定処置として、「就任の前5年間」という緩やかな規定が策定されました。現在は、「就任の前5年間」が撤廃され、完全に会社の業務執行に携わったことのない者となっていました。


 計算書類に関しても変りました。以前の計算書類は、貸借対照表損益計算書営業報告書、利益処分案又は損失処理案でした。現在は、貸借対照表損益計算書株主資本等変動計算書、個別注記表になっていました。さらに、貸借対照表において、以前は、借方に資産の部、貸方に負債の部、資本の部という区分だったのですが、現在は、借方に資産の部、貸方に負債の部、純資産の部という区分に変っています。また、以前は、自己株式の取得は、原則、禁止だったのですが、現在は、原則、自由に変りました。


 その他、『ゼミナール・会社法入門・第6版』には、会社の合併に吸収合併と新設合併があること、会社分割、株式交換、株式移転の手続き等が記載されていました。設立に際しての手続きには登記、定款作成が必要です。会社は、本店の所在地で設立登記をすることによって成立します。定款には、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項があります。定款は私的自治の原則の根幹を成すものです。それ以外にも対世的効力、将来効(不遡及)などの法がもつ役割も丁寧に書かれていて非常に勉強になりました。商法(会社法)は、私が大好きで大切な法律です。これからも取引に信頼性を与えるルール、経済発展、経済の健全性を支える重要な法律として進化していって欲しいと願っています。これからも他分野の勉強と併せて、自分の進化のために大好きな会社法の勉強は続けていこうと思います。